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これからの降雪・積雪環境変化を考える

  • 執筆者の写真: 森作り論
    森作り論
  • 10月3日
  • 読了時間: 5分

大変お久しぶりでございます。


D2 横山です。


まずは、投稿が滞ってしまったことについてお詫びをさせてください。

これからは、月に1回以上は投稿することを目標にblogの作成を楽しみたいと思います。


本題です。


9月の上旬に三重は津で開催されました雪氷研究大会に私、横山が参加しました。


雪氷研究大会は世界や地域レベルでの降雪、積雪環境の変化やどこでどんな雪に関する被害(雪崩、着雪による構造物の破損など)が発生したのか、それらに対してどのように対策すべきかなどを議論するマクロな研究から、雪の結晶のサイズや形が変わる仕組み、皆さんに身近な信号から人によっては身近な樹木などの構造物へ雪が付く仕組み、雪崩発生の仕組みについて物理学的なアプローチで議論したミクロな研究と、雪や氷に関していれば何でも良いといった大会です。


特に、今回の大会では、これからの降雪・積雪環境の変化についての話題が多かったです。


近年問題視されている気候変動により、多くの地域では降雪・積雪量が減少することが予測されています。

この原因についていくつか紹介しますと、まずは第一にこれまでは雪が降っていた地域で気温が上昇することで、降雪に対する降水の割合が上がることが考えられます。次に、雪氷藻類と呼ばれる雪の中で生活する藻が気温の上昇により大量発生し、それが融雪を促進させることです。なぜ藻がいると融雪が促進されるかは、雪と藻の「色」の違いです。言わずもがな雪は白、藻は緑か赤です。白は光を反射しますが、緑や赤は光を吸収し、その吸収されたエネルギーにより雪は溶かされます。これらの理由から、多くの地域では将来的に降雪・積雪量が減少することが予測されています。

そのため、雪氷研究大会では、降雪・積雪量の予測に関する研究や雪氷藻類の生態や融雪への影響などについて議論されていました。


それともう一つの大きいなテーマがドカ雪と湿雪についてです。

気温が上昇しても雨が降るほどではない地域もあります。気温の上昇は海水の蒸発量を増加させるため、一度降る雪の量が増加します。そして気温が高いことが原因で、降る雪の水分量が多くなり、湿った重たい雪が降ります。雪合戦をしたことがある人は分かると思いますが、湿った雪はサラサラの雪より雪玉が作りやすいです。つまり、湿雪は雪同士の接着する力が強く、町では屋根や信号、山では樹木に雪が積もりやすくなります。それが原因で、今年青森県では住宅の倒壊やりんごの枝折れが多く発生しました。


まとめると、「降雪量の減少と融雪の促進」と「ドカ雪と湿雪割合の増加」の2つシナリオがあります。


そのため、我々の研究室ではこれら2つのシナリオが森林生態系に及ぼす影響について明らかにすることを目指しており、研究を続けています。


「降雪量の減少と融雪の促進」が森林生態系に及ぼす影響を明らかにするために、上層木及び下層木の展葉時期や葉面積の拡大について、積雪量が異なる地域間で比較し降雪量の減少が及ぼす影響を、除雪実験により融雪の促進が及ぼす影響を調べています。


「ドカ雪と湿雪割合の増加」はりんごの枝折れが多く発生したことによってもわかると思いますが、樹木への力学的な負荷を増大させると考えられています。そのため、「ドカ雪と湿雪割合の増加」が樹木に及ぼす影響を理解するためには、①雪圧が樹木に与える力学的な負荷や力学的な負荷を決定づける要因と②樹木の強度との関係を明らかにする必要があります。


そこで私は、今回の大会で多雪地で優占するブナが雪によって、どのくらい曲げられており、どのくらいの力学的な負荷を受けているのかについて発表しました。


長くなりましたが、その発表の内容について簡単に触れて、今回のブログを閉めたいと思います。


今回は、幹と樹冠が雪に埋まる埋雪木と幹の上部と樹冠が雪から露出している雪上木について幹上の応力分布の違いを調べました。



左:埋雪木 右:雪上木


雪圧を受けている状態での幹の曲率(曲がっている度合い)と雪がない時期の幹の曲率の差を調べることで雪圧による幹の変形量が分かります。

調べた結果、埋雪木、雪上木ともに地際付近の幹で曲率の変化が大きく、つまり、地際付近が最も変形していることが分かりました。


ただし、曲率が大きくても応力(雪圧による力学的な負荷)が必ず大きくなるとは限りません。幹の堅さも応力を知る上では重要です。やわらかい幹と堅い幹で曲率差が同じなら、堅い幹の応力が大きくなります。そのため、幹の応力分布を明らかにするためには、幹の堅さの分布も明らかにする必要があります。


埋雪木は雪上木よりやわらかく、応力は小さかったです。ただし、埋雪木の地際付近の幹は一般的な樹木ではありえないほどやわらかったです。そのため、埋雪木の地際付近の幹では雪圧により大きく曲げられたことで繊維細胞が切れて、やわらかくなり、結果的に応力が小さくなったのではないかと考えられました。

よって、埋雪木にとって雪圧により幹が大きく曲げられても折れない仕組みが多雪地で生きる上で重要であると感じました。そのため、これからは埋雪木と雪上木の幹について、強度を調べる試験を実施する予定です。


雪圧により樹木が受ける力学的負荷と強度との関係については、現在研究中であり、分かっていないことが多いです。


これからも、地道に頑張ろうと思います。


P.S.

積雪下での幹の曲率を計測するために除雪してくれている後輩です。








 
 
 

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