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樹木生理と森林生態を結びつける

 樹木生理学の研究では環境要因と樹木の生理機能の関係から樹木が生きるしくみや成長するしくみを明らかにすることができます。そこで、気候変動が熱帯から冷温帯までの森林生態系にどのような影響を与えるのかという課題に対して樹木生理の立場からアプローチしています。

・外来種の生態と機能

 侵略的外来樹木は在来樹木の生育環境を脅かし、生態系に悪影響を及ぼしていると説明されています。ここでは外来樹木が在来樹木よりも成長が早い理由、生育地を拡大させるメカニズムを調べることにより、外来樹木は本当に生態系に悪影響を及ぼすのか?どのような管理をすれば外来樹木の繁茂をコントロールできるか?という疑問に科学的に答えています。

・タイの熱帯低地林における気候変動が森林の脆弱性に及ぼす影響

 タイの低地林は大枠では地質や土壌の深さによって植生が決まっています。植生が立地条件に依存するため、日本の森林のように環境が変われば分布域を変えることによって生態系を維持することはできません。そこで、タイの森林が気候変動によってどのように変化してしまうのか明らかにする必要があります。

 また、長期的な気候変動だけでなく、エルニーニョ・ラニーニャといった気象条件の年変動も大きく、そのせいで気温や降水量が大きく年変動します。森林を優占するフタバガキ科樹木は気候条件の年変動に対してどのように生理活性を変化させているのか知ることでタイの森林が気候の変化に対してどの程度脆弱であるか評価できると考えています。

・小笠原諸島の降雨パターンと樹木の乾燥耐性 

 降雨間隔が大きくなると土壌が乾燥するため、樹木は水分を吸収できず乾燥ダメージを受ける確率が高くなります。夏に長期の乾燥期間がある小笠原諸島にて樹木の通水機能が乾燥ストレスの進展とどのような関係にあるか、その後の降雨によってどのように回復するかについて調べています。また、この乾燥過程や回復過程で起こることは樹種によって異なるため、この樹種差を評価することにより、乾燥地で多様性が維持されるプロセスを明らかにすることができます。

・積雪地における落葉樹・常緑樹の生態

高木層の話

 本研究室の調査地に含まれる山形県日本海側の森林は、春先に残雪が多く見られます。ここにあるブナやミズナラなどの高木は、まだ雪が残っている環境下で展葉することができます。研究を進めていくと、その年の通水を担う道管形成の開始や、樹液流速の増加の開始よりも先に冬芽がいち早く水を吸って開葉することがわかってきました。根や幹が雪の下にあるのに枝先では吸水し、土壌が温められる前に芽吹くことができる仕組みの解明に取り組んでいます。

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林床の話 

 冷温帯の天然林では落葉広葉樹が優占していますが、林床面にはちらほら常緑広葉樹がみられます。常緑樹は冬季の間、雪に守られているため低木として生きていけるといわれています。また、現在ブナが優占している森林も温暖化によって将来常緑樹林になると予想されます。そこで、常緑樹は寒い冬をどのように乗り越えていくのか?落葉樹と常緑樹を同じ環境で育てるとどちらの方が成長するのか?ということを調べることによって、雪国での落葉樹と常緑樹という生き方の違いを現在および将来の視点から明らかにしています。

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