森林生態学研究室
山形大学 農学部 エコサイエンスコース
修士課程:山形大学大学院農学研究科 農学専攻 生物環境学領域
博士課程:岩手大学大学院連合農学研究科 地域環境創生学専攻 地域資源・環境管理学連合講座
樹木の成長と形態
樹木は環境要因や物理的損傷などによって大きく形態を変えます。また、同じ個体であっても小さな実生から大きな樹木に至るまで樹木が成長することで光環境や樹木の中の水分状態、自重を支える力なども変化します。そこで、樹木はどのように形態を変えながら成長するのかについて、環境要因や物理的損傷、個体サイズの増加などの視点に注目しながら研究しています。
・萌芽による樹冠・樹幹の再生
樹木は切られたり傷ついたりしたときに、萌芽再生をおこなうことにより回復しています。また、幹が古くなった際にも地面から萌芽をおこない「株立ち」となることにより、幹を新しくすることができます。そこで、萌芽をおこなうことは樹木にとってどのようなメリットがあるのか?樹種によって萌芽のしやすさはなぜ違うのか?という疑問について機能的な側面から研究をおこなっています。
・樹形形成の環境応答と制限要因
樹木が獲得できる光は樹形に依存します。周りよりも樹高を大きく成長させたら、周りよりも明るい環境下で光合成ができます。また、暗い環境下でも葉同士が重ならないような樹形を形成すると言われています。
ただし、樹木は置かれている環境に対して必ずしも最適な樹形を形成できるわけではありません。樹形形成には、水理学的な制約と力学的な制約があると考えられています。植物は葉や枝を伸ばすために水を利用するため、輸送できる水が制限される場合、樹形形成も制限されます。また、自重や風や雪は樹体を変形・損傷させる要因であり、それら力学的な負荷に耐えられるように樹形を形成する必要があります。つまり、樹形の環境応答は水理学的な制約と力学的な制約の中にあると考えられており、樹形の環境応答と制限要因の関係について研究を進めています。

←樹冠発達による通水コンダクタンスの低下に伴う
伸長するシュート長の減少


曲げ弾性係数が小さい 幹を上向きに伸ばすブナ幹
曲げ弾性係数が大きい 匍匐樹形のマルバマンサク幹
・木部構造と樹形形成の制限要因の関係
樹木の通水機能や力学機能は木部構造に依存しています。一般的な広葉樹の場合、木部は道管と木部繊維とと呼ばれる組織で構成されており、道管が通水機能(道管の大きさなど)、木部繊維が力学機能(細胞壁の厚さなど)を有していると言われています。そのため、形成する木部構造の違いにより樹木の通水機能と力学機能は変化します。また、木部内に通水と力学の二つの機能を持つ組織が混在しているため、通水機能と力学機能にはトレードオフがあると言われています。そのため、木部の通水機能と力学機能の関係が樹形形成を制限するメカニズムを解剖学的なアプローチで明らかにすることを目的に研究を進めています。


ムラサキヤシオツツジの当年生の頂枝(左)と側枝(右)の木部構造
自重による曲げモーメントが大きい側枝は道管経が小さく、木部繊維の細胞壁が厚い